Lil Nas X らとも協業する気鋭アーティスト フィリップ・クスティックを直撃
『パルコ ミュージアム トーキョー』にて4月24日（月）までエキシビションを開催中
1993年、スペイン・テネリフェ島のサンタクルス生まれのアーティスト filip custic（フィリップ・クスティック）。個人の身体と心、テクノロジーという3つの要素が、どのように相互作用し自分たちのアイデンディティを形成しているのかをテーマに、写真やライブパフォーマンス、動画、彫刻といった多岐にわたった方法で表現を行っている。
近年では、スペインの新鋭シンガー Rosalía（ロザリア）のアルバム 『El Mal Querer（エル・マル・ケレル）』や、ラッパーのLil Nas X（リル ナズ X）のヒット曲 “MONTERO (Call Me By Your Name)/モンテロ（コール・ミー・バイ・ユア・ネーム）”のビジュアルを制作するなど、著名アーティストとのコラボレーションが話題となった。2022年からは、スペインを拠点とするアートギャラリー『SOLO（ソロ）』が展開する芸術支援プログラム “Onkaos”の一員としても活動しており、世界中に活躍の場を広げている。
4月7日からは、filip custicにとって日本初となる個展 “human product（ヒューマン プロダクト）”を『渋谷PARCO』4Fの『PARCO MUSEUM TOKYO（パルコ ミュージアム トーキョー）』にて開催中。本展は、「人間の存在や、OS（オペレーティングシステム）として、自身をアップデートする能力、そして人生に意味を与える複雑なシステムを作り出す傾向について問いかける」がテーマだ。今回の展示用に製作された新作はもちろん、ビジュアルアートやウェアラブルコンピューター、インスタレーションなど、これまでに発表されたアートワークも多数並び、来たる4月21日（金）には、会場内で彼のライブパフォーマンスが行われる。このたび、『Hypebeast』では、日本での初個展開催に合わせて来日しfilip custicにショートインタビューを敢行。“human product”のテーマや、作品のインスピレーション源、制作過程までを、余すことなく語ってもらった。
Hypebeast：日本で個展を開催することになったきっかけを教えてください。
filip custic：もともと日本が好きで、今回が念願の初来日なんです。日本らしいカルチャーとテクノロジーのミックスに興味があったので、個展を開催することが長年の夢でした。一緒に仕事をしているSOLOというギャラリーから、運よくPARCO MUSEUM TOKYOで個展を開催しないか？という話をもらい、今回のエキシビションが実現しました。
今回の新作は、日本のカルチャーからインスピレーションを受けて制作されたのですか？
新作の人形は、BJDドール（球体関節人形）を元に作っています。秋葉原には、海外では見たことのないBJDの専門店があるんです。そういった背景から、この作品を日本で展示することに意味があると思いました。今回の展示のタイトルである“human product”は、資本主義の現代社会で自分自身も含め、何もかもが商品になる時代で、自分は誰なのかを問うことを目的としています。先ほどの人形は、本体以外の顔（※複数の顔パーツが付属する）はこれまでの自分で、本体は今の自分なんです。本体に顔をくっつけたり、着せ替えたりすることで、今の自分と昔の自分が見え隠れするようになっていて。自分は誰なのか、社会の中でどうやって表現していくのかを、自問自答するための作品です。
Takamuradaisuke
Takamuradaisuke
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会場にはいくつかの手法を使った作品が並んでいますが、それぞれが持つ意味を教えていただけますか？
この展示は、3つのセクションに分かれています。私のキャリアは写真を撮ることからスタートしているので、平面のビジュアルアートを入り口付近に展示しています。次に、映像やマルチメディアがコミュニケーションツールとして主流となっている、そんな時代性を表現した作品を会場中央に設置しました。最後は、本展のために制作した新作です。制作には全て3Dプリンターを使っており、先ほど説明した人形と、もう1つの新作である実際に被れるマスク。これは日本のコスプレ文化から着想を得ていて、自分で自分のアイデンティティを作れるアイテムとして考えています。
Takamuradaisuke
今回の個展において、“人間の存在やOSとして、自身をアップデートする能力、そして人生に意味を与える複雑なシステムを作り出す傾向について問いかける”をテーマとしていますが、見る人にはどんなことを感じて欲しいですか？
私が作品を通して“問う”というよりは、見る人が“枠の外から俯瞰して物事を考えることができる”というのが正しいかもしれません。例えば「なんで箱の中にモニターがあるの？」という疑問があるとしたら、僕の答えは「入れられるから、ただそれだけ」といった感じです（笑）。まずは、そういった発想を持つということが大事で、実際に目で見て自分で気付くことで、考え方が変わっていく体験をしてほしいと思っています。この展示を見た時に、私が作品で表現していることを自分の中に落とし込んで、じゃあ自分はそれについてこう考えていたんだなと気付く、という風に。見た人に「自分は何者なのだろう？」と考えさせるようなきっかけを与えたいです。
アーティストのビジュアルを手掛けるときと、今回のような個展のための作品を作るときのマインドの違いはありますか？
基本的には、どちらも同じです。アーティストがコラボレーションで声を掛けてくれる時は、それまでにコミュニケーションを取っていって、私のことを信用した上で自由に仕事を任せてくれるケースがほとんどです。逆にそうでないと良い作品が生まれないと考えています。コアの部分でお互いしっかりと信頼できる人と仕事をしたいという想いがあり、私にとっては自由に表現できることが大事なのです。そう考えると、どちらのパターンも制作する上でのマインドは一緒ですね。
最後に、この個展に来る人へのメッセージがあれば教えてください。
実際に自分の目で見て、新しい何かが（自分の中に）生まれることがあると思うので、足を運んでもらって、何か新しい持ち帰ってくれたらと思います。気軽に遊びに来てください。
filip custic exhibition “human product”
会場：PARCO MUSEUM TOKYO（渋谷PARCO 4F）
住所：東京都渋谷区宇田川町15-1
Tel：03-6455-2697
会期：4月7日（金）〜4月24日（月）
時間：11:00-21:00
入場料：一般 500円（税込）/小学生以下無料
※入場は閉場の30分前まで
※最終日18時閉場
