クルマ界の “ラグスポ” の帝王が降臨
山口県・宇部で行われた新型 Range Rover Sportの日本初試乗会を、自動車ジャーナリストのサトータケシがリポート
2022年に登場した「Land Rover(ランドローバー)」社のRange Rover(レンジローバー)は世界中で大人気となり、モデルによっては現在も品薄状態が続いている。そして2023年、Range Rover Sport(レンジローバー スポーツ)の日本でのデリバリーがスタートした。Range Rover Sportの成り立ちを簡単に説明すると、ラグジュアリーなRange Roverをベースに、精悍なスタイルのボディと、スポーティな操縦性を与えたモデルということになる。
エクステリアに関して、Range RoverとRange Rover Sportの違いをわかりやすく表現しているのが、テールランプの形だ。前者は縦長で、「風格がある」とか「格調高い」という言葉を使いたくなる。いっぽう、Range Rover Sportは横長。ボディがロー&ワイドに見え、高速域で路面に吸い付くように走る姿を連想させる。テールランプという細かいところではあるけれど、まさに「神は細部に宿る」のだ。
シンプルでありながら上品で居心地のよいインテリアは、Range Roverというブランドに共通の美点。また、“コマンドポジション”と呼ばれる、周囲の見晴らしがよいドライビングポジションにこだわる伝統も継承されている。
インテリアのトピックとして、セミアニリンレザーなどの高級皮革のほかに、ウルトラファブリックという新素材が設定されていることがあげられる。試乗車はこの仕様で、質感はまんまレザーでありながら、温度や湿度を調整する機能が与えられている。アニマルフリーの流れは、高級車でも避けては通れないのだろう。
精悍なフォルムと、美しいコーナリングフォーム
日本仕様のパワートレーンは、3ℓの直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドの“D300”と、3ℓの直列6気筒ガソリンターボ+マイルドハイブリッドの“P400”の2種類。ただし“P400”はローンチエディションだけの設定で、すでに完売していることから、ここでは“D300”の印象をお伝えしたい。ちなみに、将来的にはプラグインハイブリッドやBEV(*バッテリーに蓄えた電気だけで走る純粋な電気自動車)も登場する予定だ。
低回転域から“ずしん”というトルクを伝えるディーゼルエンジンと、電流が流れた瞬間に最大の力を発揮するモーターの組み合わせは強力で、約2.4トンというヘビー級のボディを軽々と加速させる。8速のオートマチックトランスミッションは目立たない存在であるけれど、粛々と黒子のように仕事をこなしている。変速ショックを感じないから、加速も減速もシームレスで心地よい。
この「気はやさしくて力持ち」というパワートレーンに組み合わされるのが、ステアリング操作に正確に反応する、気持ちのよいハンドリングだ。気持ちよく曲がるといっても、ライトウェイトスポーツカーのようにキビキビと曲がるわけではない。スピードスケートの選手のように、優雅な弧を描きながら、美しいコーナリングフォームで力強く曲がっていく。Range Roverがフィギュアスケートの選手だとしたら、Range Rover Sportはスピードスケートの選手ということになるだろう。
残念ながらオフロードの走破性能を試すことはできなかったけれど、動力性能、快適性、それに後席や荷室の広さなど、クルマとしての出来栄えには文句のつけようがない。Range Rover Sportも、世界的なヒット作になることは間違いないと確信した。
Land Rover Range Rover Sport Dynamic HSE D300
全長 x 全幅 x 全高:4,960 x 2,005 x 1,820mm
ホイールベース:2,995mm
車両重量:2,450kg(ディーゼル)
エンジン型式:3.0ℓ直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド
トランスミッション:8速AT
エンジン最高出力:300ps/4,000rpm
モーター最高出力:13kW/5,000rpm
エンジン最大トルク:650Nm/1,500〜2,500rpm
モーター最大トルク:42Nm/2,000rpm
乗車定員:5名
価格:1,068万円(税込)〜
公式サイト